実はわたしには一本抜けたままになっている歯があった。まだ日本にいたのはなしだけれど、子供のころに治療したある歯がものすごい炎症を起こし、ひどいことになってしまったのだ。結局抜かなければいけないことになったのだけれど、抜いたあとも傷口がふさがるまではブリッジを入れることができない。その後、奥歯であり目だ立たなかったこともあって、めんどくさくてなかなか歯医者に戻れないでいた。 私の会社でオファーしているベネフィットの中に、メディカルアローワンスというのがある。これは毎月給料の中からいくらかを医療費のために積み立てることができ、その分は税金が免除になる、というものだ。その代わり、その年の間にそのお金を医療費として使わなければ、次の年に入ると同時に取り上げられてしまう。今年こそその歯にお金をかけるつもりだった私は毎月100ドル以上も積み立てていた。そしてそれは年間で1300ドルにもなる。 産婦人科の先生に聞いたところ、さすがにカレン先生だけあり、「大丈夫よー。できれば妊娠14週くらいに入ってからのほうがいいからねー。」っていう返事。子供の命と1300ドルは変えられないけど、大丈夫なんだったらやっぱり使ってしまいたい。とにかく歯医者にいって相談してみることにした。行きつけの歯医者にいって妊娠してることを告げると、先生は、産婦人科のカレン先生に電話して、治療について確認してくれた。返事は、「局所麻酔なら今でも全然問題ありませんよ。」とのこと。そのとき妊娠10週間。とりあえず遅ければ遅いほうがいいだろうと思って、治療はクリスマス休暇の直前にしてもらうことにした。結局、妊娠14週目の時に、治療を受けた。絶対大丈夫っていわれたから大丈夫なんだろうけど、できればほんとはやりたくなかった。ほんとに問題がないといいけど。
妊娠してから2回目の旅行。ダンナの実家LAへの里帰りだ。毎年クリスマスにはLAに行くことが恒例になっちゃってるけど、今年もやっぱりいかなければ、だ。だって年に一度のLAビジットを私は何よりも楽しみにしている。 ダンナの家族はみんないい人たちばかり。私は一緒にいってもまったくストレスなんて感じたことがないし、あのクリスマスの数々のご馳走。。今年もあれをミスするわけにはいかない。それにみんなとのギフト交換も楽しみだしね。 ダンナは3人兄弟なのだけど、真ん中のお兄さんの奥さんは今妊娠中だ。2月の頭が予定日だから、もう臨月に入ろうとしている。彼女は30台後半ではじめての妊娠だ。実はこの妊娠の前に2回流産を経験した。彼らに子供が出来たってはじめ聞いたとき、私もダンナもとてもうれしかったから、流産の報告を聞いたときはショックだった。その後、数ヵ月後にまた妊娠が発覚。だけどまた妊娠3ヶ月あたりで亡くしてしまった。今回は3度目のトライだっただけに、とても慎重に過ごしてきたに違いない。私が妊娠する前に彼女たちの妊娠がうまくいって、ほんとによかったって思う。そうでなかったらお互い悲しかっただろう。 臨月だけあって、お義姉さんのお腹はもうかなり大きかった。赤ちゃんも元気に動き回ってるようだ。赤ちゃんが動いたって彼女が言うたびに、うちのダンナや、一番上のお兄さんの子供(うちのダンナの甥っ子)がお腹にさわってみる。ダンナはお腹の外からはっきり胎動を感じたそうで、はじめての経験にびっくりしていた。 お義兄さん、お義姉さんのおうちにおじゃまして、すっかり準備の整った子供部屋も見せてもらってきた。楽しい。なんだか見てるとわくわくする。壁にはちょうちょの絵の子供用のボーダーが貼られ、ピンクや黄色やブルーの水玉が壁の下半分にペイントされていた。
今回のLA里帰りにはラスベガス旅行もセットになっていた。彼の両親は毎年クリスマス後にベガスに行くのが恒例になっているのだが、今年はわたしたちも行きたーい、って夏ごろからお願いしてあった。そんなつもりはなかったのだけど、そうしたらエアチケットからホテルまで全部用意してくれた。感謝。 楽しいベガス旅行!のはずが、ベガスにたつ前日くらいから、休日の直前に入れた仮のブリッジをしてある歯が痛み出していた。最初は我慢できるくらいだったのだけど、痛みはだんだん強くなってきているようだった。我慢できずにタイラノル(痛み止め)を服用。妊娠中はアスピリンは絶対だめだ。タイラノルは飲んでもいいっていうことを知っていた。ほんとならそれも避けたいところだけど、痛くてもうそんなことはいってられなかった。一時的な痛みかも知れないと思い、定期的に薬を飲んでまぎらわせていたけど、なにやら痛みは徐々に強くなってきているみたい。ベガスからLAに戻り、その後オースティンに戻る予定の日まではあと一週間もある。とてもじゃないけど、がまんできないと思った私はベガスで急遽歯医者に見てもらうことにした。痛み止めだっていつまで飲み続けても平気なのか、それも心配だった。 めぼしい歯医者を電話帳で見つけ、電話して、状況と私が妊娠中だということを告げると、産婦人科からの同意書がないと治療できませんといわれる。担当の産婦人科に電話し、また状況を説明し、予約をいれるつもりの歯医者に同意書を送ってもらうようにお願いする。。薬のことも聞いてみた。私の体重を聞かれたので答えると、一日どのくらいの量のタイラノルなら飲んでもいいのか、ということを教えてくれた。別に一週間飲み続けても問題はないけれど、歯が炎症を起こしていたりするといけないから、やぱり出来ることなら歯医者さんにみてもらったほうがいいよ、ということだった。また歯医者に電話をかけなおし、同意書を送ってもらえることになったことをつげ、次の日の朝の予約を入れた。検査だけで80ドル近くかかるそうだ。レントゲンも取らなきゃいけないし、ほんとにお腹の子供に悪そうなことばかりしているような気がして、もうしわけなかった。歯の治療をしたのは間違いだったのかもしれない、なんて考えてた。 そして次の日。。なぜか痛みはましになっていた。。。だけどやっぱり念のために歯医者にはいくことにした。先生に状況を説明し、痛みがましになったことを告げると、先生は、「きっと一時的な痛みでしょう」っていった。炎症もおこしてるようにはみえないし、しばらくしたら直るはずだから、レントゲンも取る必要はなさそうだと説明してくれた。すこしだけ仮の歯でを削って調節してくれて、それで終わり。そしてなんと、「今日はお金をもらう理由はありません。赤ちゃんを大切に。バケーション楽しんでね。」って!それでおわり。わたしはなんだかきょとんとして、「ほんとにいいんですか?」って聞いたんだけど、ほんとにお金はいらないという。Thank you so much!っていって歯医者をでた。彼にただだったよ〜、っていって、二人で「よかったね〜」ってすごくいい気分になった。ただだったからっていうのじゃなくって、親切な歯医者さんにあって幸せな気分になったのだ。心配していた歯も何も問題なかったようだし、痛みもましになってるし。よかった! と、いうわけでその後は新しい豪華ホテルを巡って見物し、おいしい日本食を食べてぐっすり眠ることができたのだった。とにかく一件落着。
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